「海上輸送は安いが遅い、航空輸送は速いが高い」というのは、国際輸送に関わる方なら誰でも知っている話です。ただ、それだけでは輸送方法を決められません。海上輸送と航空輸送の比較で本当に知りたいのは、「どのくらい安く、どのくらい遅いのか」という具体的な差です。この記事では、それぞれの運賃がどの単位で計算されるかから差を見ていき、リードタイムや運賃以外の費用も含めて、貨物ごとにどちらを選ぶかを解説します。
海上輸送と航空輸送の運賃の違い:課金単位から比べる
運賃の差を比べるときは、1kgあたり・1CBMあたりの料率より先に、それぞれの輸送手段が貨物をどの単位で数えるかを押さえておく必要があります。
- 海上輸送(LCL):LCL(混載)では、R/T(Revenue Ton)単位で運賃が計算されます。W/M(Weight or Measurement:重量または容積の大きい方)とも表記され、1CBM(立方メートル)または1,000kgのいずれか大きい方を1R/Tとして計算するため、CBMの数値とトン数のうち大きい方がR/T数になります。
- 航空輸送:Chargeable Weight(C/W:賃率適用重量)で計算されます。実重量と容積重量のいずれか大きい方が適用され、容積重量は縦(cm)×横(cm)×高さ(cm)÷6,000で求めます。この6,000はIATA(国際航空運送協会)の一般的なルールです。
- クーリエ:国際宅配便(クーリエ)では÷5,000で容積重量を出すのが一般的です。割る数が小さいぶん容積重量は大きくなり、同じ貨物でも航空輸送より重い扱いになります。
この単位を使って、軽くてかさばる貨物1CBMを換算すると次のようになります。
- 海上LCL:1R/T(1,000kg相当)
- 航空輸送:最低でも166.67kg(約167kg)
- クーリエ:最低でも200kg
海上では1,000kg相当、航空では約167kgなので、1,000÷166.67=6となり、航空は海上の6分の1の重さで同じ1CBMを数えていることになります。この比率は運賃相場に関係なく変わりません。
ここに料率を掛けると金額の差が見えてきます。以下は比較のための例示運賃で、実際の相場ではありません。LCLのAll in運賃(諸費用込み)を1CBMあたり$60~150、航空運賃を1kgあたり$3~8とし、海上を$100と仮定すると、1CBMの軽量貨物は次のとおりです。
- 海上:約$100
- 航空:167kg×$3~8=約$500~1,300
よって差は約5~13倍です。ただし、この倍率は海上と航空それぞれの運賃相場によって動きます。海上側を$60~150の幅で見れば、倍率の幅はさらに広がります。信頼できるのは金額の倍率ではなく、1CBMが海上で1R/T、航空で約167kgになるという換算の比率のほうです。
運賃の動きは運賃指数で追えます。例えばFBX(Freightos Baltic Index)は12の航路を対象に、毎日06:00 UTCに算出して14:00 UTCに公表する日次指数と、5営業日の平均を毎週金曜日に公表する週次指数を出しています。
自社貨物の輸送手段ごとのC/WはChargeable Weight計算ツールで出せます。実重量と課金される重量が違う理由はChargeable Weightの解説で詳しく説明しています。
段ボール100個の例:海上・航空・クーリエで比べる
具体的な貨物で比べてみます。60×40×40cm、1個8kgの段ボールが100個ある場合です。
- 容積:60×40×40×100÷1,000,000=9.6CBM
- 実重量:8kg×100個=800kg
- 1CBMあたりの重量(密度):800÷9.6=約83.3kg
航空輸送で容積重量と実重量が等しくなる密度は1CBMあたり約167kgなので、この貨物はその半分ほどしかありません。典型的な「軽くてかさばる貨物」です。輸送手段ごとの課金数値は次のようになります。
- 海上LCL:9.6R/T(容積重量9,600kg相当が実重量800kgを上回るため、容積で課金)→ ツールで海上の計算を確認
- 航空輸送:9,600,000÷6,000=1,600kg → ツールで航空の計算を確認
- クーリエ:9,600,000÷5,000=1,920kg → ツールでクーリエの計算を確認
リンクを開くと、この段ボールの寸法・個数・重量が入力された状態でツールが表示され、実重量・容積重量・C/Wを確認できます。
先ほどの例示運賃を当てはめると、金額は次のとおりです。
- 海上:9.6R/T×$60~150=約$580~1,440
- 航空:1,600kg×$3~8=$4,800~12,800
両方の中間値(1CBMあたり$105、1kgあたり$5.5)で比べると、海上$1,008に対して航空$8,800となり、差は約8.7倍、ざっくり約9倍です。
この差は貨物の密度によって変わります。航空輸送では1CBMあたり約167kg、クーリエでは200kgを超える貨物は実重量で課金され、容積による不利がなくなります。一方、海上LCLは1CBMあたり1,000kgまで容積で課金されます。つまり、重くてコンパクトな貨物ほど、輸送手段による課金数値の差は縮まります。
逆に、貨物がごく小さい場合は話が変わります。LCLでは1CBM未満でも1CBM分を請求するのが一般的で(条件によって異なり、地域によっては最低3CBMの例もあります)、さらに積地・揚地のCFSでの作業費など、出荷ごと・R/Tごとにかかる費用があります。貨物が小さいほどこうした固定的な費用の比重が大きくなるため、Door to Doorの総額ではクーリエや航空輸送のほうが安くなることがあります。どこで逆転するかは運賃と固定費しだいで、決まった数値はありません。
リードタイムの違い:航路ごとの所要日数
運賃の差と引き換えに、海上輸送ではどれだけ時間がかかるのかを見ておきます。主な航路のDoor to Doorの所要日数の目安は次のとおりです。
| 航路 | 海上輸送(Door to Door) | 航空輸送(Door to Door) | クーリエ |
|---|---|---|---|
| 東アジア → 米国西岸 | 18~25日 | 3~6日 | 2~4日 |
| 東アジア → 米国東岸 | 28~38日 | 4~7日 | 2~4日 |
| 東アジア → 北欧州 | 32~42日 | 3~6日 | 2~4日 |
| アジア域内 | 5~12日 | 1~3日 | 1~2日 |
※遅延がない場合のおおよその範囲です。業界の経験値にもとづく目安で、船会社・航空会社の公表値ではありません。
大陸間の航路では、海上輸送は航空輸送より約2~5週間多くかかります。米国西岸で約2~3週間、米国東岸で約3~5週間、北欧州で約4~5週間の差です。航空輸送の中でもサービスによって差があり、特急で1~3営業日、標準で3~5営業日、エコノミーや混載では5~7営業日以上が目安とされています。
海上輸送は表の日数どおりに着くとは限りません。港湾混雑、ブランクセーリング(欠便)、税関検査があると、それぞれ1週間以上延びることがあります。航空輸送でも通関で数日遅れることはあります。
LCLは積地で混載の貨物がそろうのを待ち、揚地でコンテナから仕分ける作業が入るため、FCL(フルコンテナロード)より日数がかかります。どのくらい延びるかは航路や混載業者によって異なります。詳しくはFCLとLCLの違いをご覧ください。
主要航路の多くは週1便のサービスです。CUT日(搬入締切日)に間に合わなければ次の便まで約7日待つことになります。中継港での積み替えがある便は、直行便より寄港地が増えるぶん日数も延びます。
着日が決まっている貨物は、海上の所要日数の遅い方に約1週間を足して計画しておくと安心です。この余裕は船積みの段階ではなく、発注日の段階で織り込んでおきましょう。
見積もりの料率に含まれない費用
運賃の料率だけを比べると、あとから請求書で思わぬ差が出ることがあります。輸送手段ごとに注意したい費用は次のとおりです。
- LCLの諸費用:海上運賃(Ocean Freight)のほかに、積地での取扱費用、CFSでの作業費、書類作成費、揚地での費用がかかり、出荷ごとまたはR/Tごとに請求されます。比較するときは、Door to Doorまたは港渡しの条件をそろえ、諸費用をすべて含んだAll inの見積もりを依頼しましょう。
- 航空の再計量:航空会社や運送会社が貨物の重量・寸法を測り直し、申告値と違っていれば、請求されるC/Wが変わる場合があります。
- 航空のサーチャージ:燃油サーチャージや保安料(SSC)は運賃とは別の項目で、航空会社や時期ごとに改定されます。例えば大韓航空の韓国発貨物では、毎月16日から翌月15日までを適用期間として、1kgあたりの金額が設定されています。
- クーリエの追加料金:配達が難しい地域への遠隔地料金や、個人宅への配達にかかる料金が加わることがあります。貨物が小さいほど、運賃に対するこれらの比重は大きくなります。
なお、海上輸送にも港湾保安のためのISPSチャージ(港湾保安料)があります。これは航空の保安料とは別の項目です。海上・航空のサーチャージの種類はサーチャージの解説にまとめています。
運賃だけで決めない:リードタイムにかかるコスト
運賃だけで比べれば、ほとんどの貨物は海上輸送が有利です。ただ、海上輸送で余分にかかる2~5週間にもコストがあります。判断のときは次の点も考えに入れましょう。
- 在庫保持コスト:輸送中の貨物も在庫で、その間は資金が寝ています。例えば資本コストを年20%と仮定すると、30日余分にかかれば20%×30÷365=約1.6%で、貨物価値の約1.6%に相当するコストが発生します。
- 陳腐化と季節性:販売期間が短い商品は、着くのが遅れるだけで売れる期間が削られます。
- 欠品のコスト:在庫切れになると、マーケットプレイスでの順位が下がったり、取引先との契約でペナルティが発生したりするおそれがあります。
- 需要の読み違い:海上輸送では、リードタイムの差の分だけ早く発注量を確定しなければなりません。予測が外れたときの影響もそれだけ大きくなります。
航空輸送がどんな貨物に使われているかも参考になります。IATAによると、航空貨物は年6,200万トン以上、金額にして約$8.3兆で、世界の貿易量の1%未満にすぎませんが、金額では33%を超えます。平均すると1kgあたり約$134で、1kgあたりの商品価値が高い貨物ほど航空輸送が選ばれていることがわかります。
実務では、どちらか一方に決めるのではなく組み合わせる方法がよく取られます。需要予測で見込める基本の物量は海上輸送で送り、予測が外れた分や新商品の発売直後の需要増には航空輸送を使います。
季節商品を海上と航空に分けて送る例
11月初旬に店頭に並べたい季節商品が20CBMあるケースで考えてみます。
- 9月初旬にLCLでブッキングします。ただし20CBMは、FCLとLCLの分岐点としてよく挙げられる13~15CBM(業界の目安で、航路や相場によって変わります)を超えているため、FCLの見積もりも取っておきましょう。分岐点の考え方はFCLとLCLの違いで解説しています。
- 海上で10月中旬に着けば、店頭に並べるまで約2週間の余裕があります。
- 全量を海上に任せず、18CBMを海上で送り、残り2CBM(全体の10%)は航空で追加できるように準備しておきます。
軽い貨物なら、航空で送る2CBMのC/Wは2×166.67=約333kg以上になります。海上の到着が遅れたときや、売れ行きが予測を上回ったときだけ航空分を動かせば、運賃の大半を海上の水準に保ちながら欠品を防げます。
まとめ:貨物ごとの輸送方法の選び方
最後に、輸送方法を選ぶときの目安を整理します。金額やkgの境目は業界の経験則で、公的な基準ではありません。
- 1kgあたりの商品価値が約$5未満:海上輸送が向いています。
- 1kgあたり約$100超、または販売期間が6週間未満:航空輸送を基本に考えます。
- C/Wが約150kg未満:クーリエの見積もりも取りましょう。
- 1CBMあたりの重量が167kgを大きく下回る:航空輸送が最も不利になる貨物です。容積重量の考え方は容積重量の解説をご覧ください。
- 上記に当てはまらない:海上・航空の両方でAll inの見積もりを取り、海上側にはリードタイム分の在庫コストを上乗せして比べます。
重量で見た目安として、国内のフォワーダーの中には、10kg未満ならクーリエが航空輸送より安く、100kg以上なら航空輸送がクーリエより安く、1,000kg以上では海上、航空、クーリエの順に安くなると案内しているところもあります。また、500kg未満の貨物は原則として航空輸送のみで見積もるという方針のフォワーダーもあります。見積もりを依頼する前に、自社貨物の実重量と容積をそろえておくと比較がスムーズです。
海上輸送は航空輸送より何倍安いですか?
軽くてかさばる貨物1CBMで比べると、海上のLCL(混載)は1R/T(1,000kg相当)で課金されるのに対し、航空輸送は約167kgのChargeable Weightで課金されます。例示運賃としてLCLを1CBMあたり$100、航空を1kgあたり$3~8と仮定すると、海上は約$100、航空は約$500~1,300となり、差は約5~13倍です。この倍率は両方の運賃相場で動き、LCL運賃を$60~150の幅で見ればさらに広がります。変わらないのは1CBMが海上で1R/T、航空で約167kgになるという換算の比率です。
海上輸送は航空輸送より何日(何週間)遅いですか?
大陸間の航路では、海上輸送は航空輸送より約2~5週間多くかかるのが目安です。例えば東アジアから米国西岸までのDoor to Doorでは、海上18~25日に対して航空3~6日、米国東岸なら海上28~38日に対して航空4~7日です。これは遅延がない場合の業界の経験値で、船会社の公表値ではありません。港湾混雑やブランクセーリング(欠便)、税関検査があると海上はさらに1週間以上延びることがあります。
海上・航空・クーリエの課金単位はどう違いますか?
海上のLCLはR/T(Revenue Ton)で課金され、1CBMまたは1,000kgのいずれか大きい方が1R/Tです。航空輸送はC/W(Chargeable Weight)で、実重量と容積重量(縦(cm)×横(cm)×高さ(cm)÷6,000)のいずれか大きい方を使います。クーリエ(国際宅配便)は÷5,000で容積重量を出すため、同じ1CBMでも200kgとして扱われます。軽い貨物は容積、重い貨物は重量で課金されるという考え方は共通です。
航空輸送やクーリエのほうが安くなるのはどんな場合ですか?
貨物がごく小さい場合です。LCLは1CBM未満でも1CBM分を請求するのが一般的で(条件によって異なり、地域によっては3CBMの例もあります)、CFSでの作業費など出荷ごとにかかる費用もあります。貨物が小さいほどこうした固定的な費用の比重が大きくなり、Door to Doorの総額ではクーリエや航空輸送が安くなることがあります。どこで逆転するかは運賃と固定費しだいで決まった数値はないため、両方の見積もりを取って比べましょう。
何kgから海上輸送のほうが安くなりますか?
国内のあるフォワーダーが示す目安では、1,000kg以上になると海上、航空、クーリエの順に安くなります。それより軽い範囲では、10kg未満ならクーリエが航空輸送より安く、100kg以上なら航空輸送がクーリエより安いとされています。業界の目安で、決まった基準ではありません。ただし実際の課金は重量だけでなく容積でも決まるため、軽くてかさばる貨物は航空で不利になりやすい点に注意が必要です。
航空輸送を選ぶべきなのはどんな貨物ですか?
1kgあたりの商品価値が高い貨物や、販売できる期間が短い貨物です。経験則として、1kgあたり約$100を超える商品や販売期間が6週間未満の商品は航空輸送を基本に考え、約$5未満の商品は海上輸送が向いています。季節商品の売り逃し、欠品によるマーケットプレイス順位の低下や契約上のペナルティなど、運賃以外の時間のコストが大きいほど航空輸送を選ぶ理由が強まります。
海上輸送と航空輸送はどう組み合わせればよいですか?
需要予測で見込める基本の物量は海上輸送で送り、予測が外れた分や新商品の発売直後の需要増には航空輸送を使う方法が一般的です。例えば20CBMの季節商品なら、18CBMを海上で早めに送り、残り2CBM(全体の10%)を航空で追加できるようにしておくと、欠品リスクを抑えながら運賃の大半を海上の水準に保てます。